神宮、大社、神社…名前の違いを知っていますか?
「名前には格式がある」
神社の入り口にある石碑を見てください。「〇〇神社」だけではなく、「〇〇神宮」「〇〇大社」「〇〇宮」と書かれていることがあります。これらは「社号(しゃごう)」と呼ばれ、単なる名前の違いではなく、その神社の歴史、格式(社格)、そして祀られている神様の種類(祭神)を明確に示す「称号」なのです。
明治時代以前、神社の名前はもっと複雑で、仏教用語が混ざったものも多くありました。現在のような呼び方に統一されたのは比較的最近のことです。この歴史的背景を知ると、神社のヒエラルキーと、それぞれの神社の「個性」が見えてきます。
社号のヒエラルキー:6つのランク
社号には厳格なピラミッド構造があります。上から順に詳細を見ていきましょう。
1. 神宮(Jingu):皇室の祖先神
最も格式が高い社号です。主に**皇室の祖先神(天照大御神など)**や、皇室と縁の深い過去の天皇をお祀りしています。
- 伊勢神宮(Ise Jingu):正式名称は単に「神宮」。他の神宮と区別するために地名をつけて呼びますが、本来は「神宮」といえばここ一社のみを指します。別格の存在です。
- 明治神宮(Meiji Jingu):明治天皇と昭憲皇太后をお祀りしています。
- 熱田神宮(Atsuta Jingu):三種の神器の一つ(草薙剣)をご神体としてお祀りしているため、特別に神宮の称号を持ちます。
- 北海道神宮(Hokkaido Jingu):開拓三神と明治天皇をお祀りしています。元々は「札幌神社」でしたが、昭和に入ってから神宮に昇格しました。
- 鹿島神宮・香取神宮:関東にある古社。平安時代の国家記録『延喜式』で「神宮」と書かれたのは、伊勢とこの2社だけでした。
2. 宮(Gu):皇族・歴史的偉人
本来は天皇や皇族(親王)をお祀りする神社に使われましたが、歴史的に重要な人物(菅原道真公、徳川家康公など)をお祀りしている神社にも使われます。
- 天満宮(Tenmangu):学問の神様、菅原道真公。太宰府天満宮と北野天満宮が有名です。
- 東照宮(Toshogu):徳川家康公。「東照大権現」として祀られました。日光東照宮が最も有名ですが、全国にあります。
- 八幡宮(Hachimangu):八幡神(応神天皇)。全国に一番多い神社のひとつで、武運の神様として武士に崇敬されました。
- 水天宮(Suitengu):安徳天皇や水の神様をお祀りし、安産祈願で有名です。
3. 大社(Taisha):全国の総本社
元々は「出雲大社(いづもおおやしろ)」のみに使われていましたが、明治以降、全国に多数ある同名の神社の**総本社**(グループのリーダー)的な神社や、地域の一之宮(いちのみや)など、特に格式の高い神社に使われるようになりました。
- 出雲大社(Izumo Taisha):大国主大神を祀る、縁結びの総本社。
- 伏見稲荷大社(Fushimi Inari Taisha):全国に3万社ある稲荷神社の総本宮。
- 春日大社(Kasuga Taisha):藤原氏の氏神をお祀りする総本社。
- 諏訪大社(Suwa Taisha):全国の諏訪神社の総本社。
- 熊野那智大社(Kumano Nachi Taisha):熊野三山のひとつ。
4. 神社(Jinja):一般的な呼称
最も一般的な社号です。しかし、名前がシンプルだからといって力が弱いわけではありません。地域に根ざした「氏神(うじがみ)さま」の多くは〇〇神社であり、あなたを一番近くで見守ってくれている存在です。
5. 社(Yashiro):小規模な神社
比較的規模の小さい神社や、個人の邸宅内にあるお社などに使われることがあります。
6. 権現・明神(Gongen / Myojin)
歴史的な文献や、古い石碑には「〇〇権現」「〇〇大明神」と書かれていることがあります。これらは明治時代の「神仏分離令」で廃止されましたが、今でも通称として親しまれています。
- 権現(Gongen):「仏が仮の姿(権)で神として現れた」という意味。神仏習合時代の独特な呼び名です(例:箱根権現、金比羅権現)。
- 明神(Myojin):神様の尊称。「明らさま(明らか)に姿を現した神」という意味で、豊臣秀吉は「豊国大明神」として祀られています。東京の神田明神もこの名残です。
一之宮(Ichinomiya):地域ナンバーワンの神社
社号とは別に、「一之宮」という称号があります。これは、昔の国(Province)の中で**最も格式が高い神社**のことを指します。その地域の守護神であり、地元の人々にとって特別な存在です。
有名な一之宮の例
- 武蔵国(東京・埼玉):氷川神社(大宮)、小野神社(多摩)
- 相模国(神奈川):寒川神社
- 安芸国(広島):厳島神社
- 薩摩国(鹿児島):枚聞神社
旅行に行った際、その土地の「一之宮」をお参りするのは、その土地の神様にご挨拶をする最高の方法です。
近代社格制度(旧社格)の名残
明治時代から戦後まで、「官幣大社」「国幣中社」といった国家によるランク付け(近代社格制度)がありました。現在は廃止されていますが、神社のパンフレットや石碑にこの言葉を見ることがあります。
「官幣(かんぺい)」は皇室からお供えがある神社、「国幣(こくへい)」は国庫からお供えがある神社、という意味です。これも神社の歴史と重要性を知る手がかりになります。
歴史を知れば、参拝が変わる
社号を見るだけで、「あ、ここは皇室ゆかりの神様なんだ」「ここは全国のお稲荷さんのリーダーなんだ」と分かります。
背景を知ることで、神様への敬意がより深まり、参拝の時間がより意義深いものになるはずです。次に鳥居をくぐる時は、ぜひ石碑の文字に注目してみてください。そこには、その神社の誇りと歴史が刻まれています。
祈りの後、メッセージを受け取ったり、おみくじを引いてこれからの指針を得たりすることができます。
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